カットで彫刻?フランスのパリ仕込みのエフィラージュカット!
皆様こんにちは〜。
2ヶ月間で11キロ減量から体重が減らずにジレンマに陥っているヘアデザイナーの空(くう)です。
さて本題です。
今日は当店のオリジナルカットである『彫刻カット』のルーツについて記事を書いてみようと思います。
彫刻カットというネーミングは決して新しいものではなくて、むしろ昔からこの表現を使う美容師は多かったように思います。
私もこの言葉を使用する前に、『彫刻カット・・・』ってなんか古いイメージだよな〜・・と使用するかどうか迷ったりしました。
結局は適切な言葉が見つからないで『彫刻カット』を使うことにしました。
このカット技法の根底にあるものは、フランスのパリ市内にあるmaniatis美容室で半年間かけて習得したエフィラージュというカット技法があります。
エフィラージュは彫刻カット技法の基礎的な部分ではあるのですが、大枠はブラントカットで荒切りをして大まかなフォルムを形成します。
ブラントカットはヴィダルサスーンが元祖と言われておりますが、髪を切る際に頭部をブロックで分けて、濡れた髪をパネルでカットしていく技法です。
18歳で美容学校を卒業して当時はインターン生として、最初の就職先でブラントカットを教えてもらいました。
日本中がヴィダルサスーンのブラントカット一色で大流行りしていた時代でした。
21歳で東京のスタジオVに転職し、ここでも御多分に洩れずブラントカットを教えてもらいました。
18歳から22歳までの4年間はブラントカットしか知りませんでした。
その後23歳からヘアメークに転職して、美容室を離れて『トップノット』のアトリエというヘアメーク専門の事務所にいました。
仕事は六本木や麻布などのスタジオで雑誌やCMの撮影現場でアシスタントをしてヘアメークを学び自立していきました。
ヘアメークの時代は一般の方をカットする機会がほとんどなく、主にタレントやモデルとの撮影がメインの仕事でした。
25歳から再びカットの修行がフランスのパリにある美容室で始まりました。
その後29歳で美容室を開業してからの10年間はブラントカット(ヴィダルサスーンのカット技法)+エフィラージュ(マニアティスのカット技法)+『何か?』というカット技法の試行錯誤がありました。
『何か?』の部分はカット技法を自分自身のオリジナルなものにするための『納得のいく何か?』を探していました。
セニングカットやレザーカットやスライドカットなどを取り入れたりしながら上記の2つの技法にオリジナルの技法を加えようとしたのですが、いまいち納得のいくフォルムになりませんでした。
その頃、東京の代官山にあるBoyという美容室の茂木さんに出会いました。
代官山まで講習に行き学んだのが『ハズシ』というカットの考え方でした。
当時はいろんなカット技法を試していたこともあった中でも、『ハズシ』は飛び抜けてかなり衝撃的でしたね。
しばらくはハズシを取り入れて見ながら、それでも全てが納得のいくカット技術ではないと自分自身で思っていましたので、さらに自己確立を目指して手探り状態で『足りない何か?』を探していました。
ハズシはエフィラージュに少し似ている部分もありましたが、ハズシが大胆なカットであるのに対して、エフィラージュは極めて繊細なカット技法でしたが、カットの方法自体は似ていました。
彫刻的に髪型を造形していく部分が特に似ていると感じた部分です。
しかし・・・
何を取り入れても、何を省いても自分自身で納得のいく答えは見つかりませんでした。
そんなある時に・・・
東京の青山にあるカリスマ美容室であるメーカーと出会うきっかけがありました。
その美容室はザックという美容室で当時はかなり有名店で、オーナーの高橋さんがケミカル方面でカリスマ美容師と言われていました。
ザックの高橋さんは「髪のお医者さん」という称号をもらうほど毛髪理論に長けていました。
私はどこで勉強したんだろう??といつも思っていました。
『シザーズリーグ』なんていうテレビ番組まで出てきて、カリスマ美容師ブームの火付け役としてザックの高橋さんは持て囃されていました。
私は美容室を経営していましたが、上手い美容師がいると聞くと、近所でも遠方でもカットやパーマやカラーをしてもらいに出かけていくタイプでしたので、働いていたスタッフもいろんな美容室にカットにいくことは珍しいことではありませんでした。
美容室を29歳で開業して41歳まではとにかく有名な美容室に予約をしてカットをしてもらうことがしばしばありました。
私は長い年月『足りない何か?』を探し求めていたので、答えを探して色々なメーカーや美容ディーラーの情報やセミナーや講習会に片っ端参加して『足りない何か?』を求めて彷徨っていました。
そして41歳の時に青山の美容室にカットに行った時に『求めていた何か?』と出会うきっかけがありました。
その美容室でカットしてもらっている時にそのカリスマ美容師には実は先生がいて、その先生に毛髪理論を教えてもらったという話を聞いたのです。
その先生が当店で現在取り扱っているMF(マウンティンフォレスト)シャンプーのメーカーの社長さんである山﨑さんという方でした。
私はその話を聞いて『これだ!』と心の中で叫びました!
私が何十年も探し求めていた『足りない何か?』はその先生だと思ったのです。
それは極めて直感的に『求めていた何か?』がその方であることがわかりました。
17歳から41歳までの実に24年間に美容師人生でMFに出会うままでは、まるで盲目の美容人生でした。
MFに出会ったことで、それまで試行錯誤していたカットの技法についてや、パーマやカラーの薬剤知識や他の美容師に関する問題点についてなど全ての疑問が氷解していきました。
MFから学んだどの知識も、どの技術も全てが納得のいくものでした。
全てが『足りない何か?』についての答えだらけだったんです。
カット技法についても、何が良くて何が悪いのかが明確に判断できるようになりました。
特に衝撃的だったことは、それまでは美容師は『アーティスト』だと思い込んでいましたが、MFの社長に「美容師はアーティストではなくてデザイナーなんだよ」と教えてもらいました。
アーティストは自分が作りたいヘアスタイルを作る。
デザイナーはお客様とのコミュニケーションを取りながらお客様のイメージをデザインする。
この両者の違いは限りなく大きい!と思いました。
それまでの私は自分がいいと思うヘアスタイルをお客様に押し付けていたと気がつきました。
当時を振り返ると、理由はいろいろでしたが、美容師側の主観的でヘアスタイルを決めることが多かったように思います。
アーティストは自分が気に入った髪型を良しとしますが、デザイナーはお客様が良しと思ったもので価値を見出します。
この違いわかりますか?
皆さんも、もしかして経験あります?
お客様の好みや希望よりも美容師側の押し付けで失敗したりしたことってありますか?
私は遅ればせながらも、美容師歴22年過ぎた頃に、美容師の満足とお客様の満足は違うんだ!という気づきを得ました。
これって大きいことですよね?
私がレザーカットやスライドカットについて納得がいかなかった理由もはっきりしました。
それはカット技法で髪のダメージは最小限で抑えることもできれば、枝毛や切れ毛の原因行為となるカット技法もあることがわかりました。
下図をご覧ください。
上図のビフォー&アフターのようにキューティクルはスライドカットやレザーカットなど髪の表面を滑らせるカット技法でダメージを拡大させることになります。
髪の切り口は小さいほどダメージが少なく、滑らせながら髪を切る技法によって消失した髪表面のキューティクルは2度と再生しません。
上図は左はカットの切り口が最小限度の大きさで止まっている状態で、切り口は円形に近い形です。
右はカットの切り口が斜めに切ってあり、剃刀つまりレザーカットやスライドカットでの切り口です。
両者を比べると、ハサミを毛髪に対して直角に当てハサミを開閉した方が切り口は円形で小さいことがわかります。
右のレザーカットによる斜めの切り口は断面が楕円形で大きくなるため、先端部のタンパク質がたくさん流出しますので、それだけ髪のダメージが進行します。
髪の主成分である髪内部のタンパク質の流出面積や流出量でダメージの大きさが変化します。
カットでヘアデザインを作る際に道具や技法は何でも良いのか?
というと、どうやらそうではないといことがMFに出会って初めてわかりました。
お客様に本来備わっている天然のキューティクルを損傷、消失させるカット技法の存在があることはとてもショッキングでしたが、本能的に私には理解できました。
というのもそれまで様々なカット技法を試すことで感じていた髪のダメージの原因が一つわかったからです。
カットの断面積が広いということはそれだけ、ご自宅でシャンプーをする度に髪内部のタンパク成分が流出しますので、髪が乾燥し空洞化が進みます。
毛先はパサパサしてまとまらず、毛先から根本にかけて髪が縦に裂けていくような枝毛現象が多発します。
ここで一般的に言われている、擬似キューティクルについて説明します。
カット技法で消失したキューティクルを樹脂系・ポリビニール系の皮膜剤で覆えば問題ないのでは?という考えがあります。
皆さんがシャンプーした後にトリートメントやリンスをつけて、手触りがツルツルに変化しますよね?
あのツルツルした成分が樹脂やポリビニールの膜で覆われた擬似キューティクルです。
しかしそれは間違っています。
髪の風合い、つまり手触り感やしなやかさや艶感など、偽物のキューティクルと、天然のキューティクルとではまるで別ものです。
絶対に天然のキューティクルには到底敵わないのが、偽物の擬似キューティクルです。
擬似キューティクルのようなシリコンやジメチコンやポリマーなどのビニール系や樹脂系のコート剤はキューティクルの替わりになるどころか、髪の艶感を損ないキューティクルの破損を拡大させることにも繋がっていきます。
皮膜剤を使えば使うほど不自然な艶感になります。
カットの技法を確立しようとしていた頃に出会ったスライドカットやレザーカットは髪のダメージを拡大させるカット技法として私の選択肢からは消えていきました。
次にセニングカットですが、セニングは以前も記事で書きましたが、規則正しく毛量を少なくする道具のことです。
セニングという道具の名前なのでカット技法ではありませんが、立体的に髪の形を作りたいと考えていた私にとって、どういう使い方をしたとしても規則性が強いため、機械的な仕上がりが好きではありませんでした。
機械的で規則正しい毛量調整がどうして不自然に思えるのか?
それは私が自然の美を良しとしていることがあります。
例えるなら自然の美しい樹形の木を思い描くとわかりやすいですよね?
あの美しい樹形の自然の樹木は枝の大きさが全て違います。
これは髪型でいうと束が全て違うここと同じニュアンスです。
それぞれの枝の太さや長さが全て違うのに全体として美しい樹形を形成している。
そういう美しさが自然の美しいところです。
私としては髪型を形成している毛束も同じことを感じているわけです。
セニングを多用した髪質は、規則正しい毛量調整で毛束感が損なわれるので、毛束感を出すためにワックスやヘアクリームなどが必要になってきます。
毛先だけがスカスカにもなりやすいので、毛束の動きも出にくくなります。
動きを求めないワンレングスのボブなどにはセニングは向いているかも知れませんが、髪型を立体的に見せ動きのあるヘアスタイルには不向きだと思っています。
ですから、セニングカットも選択肢からは外れてもらいました。
だからと言って誰に対してセニングを使用しないか?というとそうでもありません。
99%の方にはセニングを使いませんが、男性や子供など稀にセニングを使う場合もあります。
セニングカットについてはこちらの動画でも話しています。
上図のように、ハサミの角度を直角に近い形にすることで、髪の損傷を最小限に抑えています。
ハサミを開閉せずに髪の表面を滑らせるようなカット技法をスライドカットと言います。
上図のようにハサミを開閉してカットするとダメージは最小限で収まります。
こうして20年以上の歳月を費やして確立されたのが当店の『彫刻カット』ですが、本当は今話しましたように、ただ単に彫刻のようにカットするだけではありません。
造形だけのカット技法ではなくて、毛髪の損傷なども細部までこだわったカット技法を当店独自に「彫刻カット」と呼んでいます。
しかし本当のところは『ダメージレス彫刻カット』というのが正式な名称なんです。
名前が長くなってしまうので『彫刻カット』と呼んでいます。
上図のように襟足は根本からカットして毛量を調整して「くびれ」を作ります。
襟足からくびれを作ることで後頭部にボリュームが残っていき、サイドシルエットがより立体的な形に変化していきます。
上図のように床に落ちた毛束が、残った毛束感を象徴しています。
不要な毛束を切り落として、毛束感のある髪型を作り込んでいきます。
クシを使わないで指で毛束を摘んで切り落とすので、落とした髪の毛が束になっているということは、頭部に残った髪は毛束ということになるわけです。
上図のように、横顔のシルエットも立体的になりました。
この延長で斜めサイドや、バックサイドなどからのシルエットも平面的では無くて、メリハリのあるくびれデザインに変わりました。
ということで今日は彫刻カットのルーツと定義について語ってみました。
『ダメージレス彫刻カット』とはこのような20年以上の美容師歴の中でようやく辿り着いた結論でありますし、ここ20年以上変わらないカット技法として確立したものとなっています。
今回山中湖畔で美容室を2020年12月1日にオープンしましたが、その時の第一弾で制作したチラシで使用した10名のモデルさん達は全員10年〜20年前に撮影させて頂いた方々です。
こちらでオープンしてからは当店でカットして撮影した方々をモデルさんとして許可を頂きチラシやホームページに掲載させて頂いています。
え?20年前の髪型だったんですか?って驚かれる方もいるかも知れませんね〜^^
そして現在の当サロンに来店されている方々の写真はこちらです。
それでは最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございました。
いつかサロンでお会いできる日を楽しみにしております。