骨格を補正するヘアスタイルのフォルム作りについて考察してみます

皆さんこんばんは。
ヘアデザイナーの空です。
皆さんは骨格の補正っていうと何を思い浮かべますか?
41年の美容師人生で数多くのお客様の骨格を見てきました。
パリで美容師をしたり、東京でコレクションのバックステージなどで外国人のヘアメークも担当していました。
日本人の骨格にはある特徴があります。
それはハチが張っていて、後頭部が絶壁の骨格の方が多いということです。

西洋人の場合は真逆で顔の横幅が狭くて奥行きのある骨格の方が多いと思います。
日本人はハチが張っているので、トップが平たい方も多く、四角い髪型になりやすいと言えます。
昨日来店されたお客様がそういう骨格の悩みをお持ちでした。
アフターの写真からは、骨格が絶壁で長年悩んでいたようには見えないかも知れませんが、実際には最初のカウンセリングでそのように聞いております。
私が骨格を触った時にも確かにそういう骨格であることを確認しました。
来店時にはくびれが無くて、横顔が平坦なシルエットになっておりましたので、骨格補正の提案をして横顔シルエットで後頭部に丸みのある奥行きシルエットに彫刻カットしました。
それではわかりやすくするために最初に来店された時のシルエットを写真とイラストで描いてみます。

このように後頭部のシルエットが平坦になっていて、襟足が下膨れのシルエットになっていました。
カットした後の次の絵をご覧ください。

赤いラインが来店された時のフォルムです。
黒い部分ベタ塗りが骨格を補正するために描いた理想的なラインです。
このフォルムを出すには彫刻カットしかありません。
一般的で伝統的なカット技法は面と面とを繋ぐことで構成されてゆくパネル構成のブラントカットです。
私のカットは点と点を繋いでゆくカットなので、真逆のカット技法と言えるかも知れません。
日本で主流となっているブラントカットは髪が濡れている状態でカットして行きます。
私のカットは髪を乾かした状態でカットしていきますので、ここでも真逆のカット技法となります。
髪が濡れている状態は、化学的な変化では水素結合が切断されて、お客様の普段の状態との乖離が生まれます。
普段お客様は乾いた状態で生活しているという意味で、濡れ髪とのギャップがあるということです。
髪は乾かすと水素結合が再結合されるため、髪は収斂し、少し短くなります。
収斂する際に髪の癖やねじれが出てきますので、ボリュームが出てきたり、癖毛で膨らんだり、襟足が浮いてきたりしますので、お客様の普段の状態が再現されます。
またシャンプー後にドライヤーをかける際に毛流を考慮して、髪を立ち上げながら乾かしますので、ボリュームが普段以上にオーバーに出てくるようにします。
そうして癖毛を出して、ボリュームを出して、彫刻で削るようにカットします。
不要な箇所を削ることで、必要な箇所にボリュームが残ります。
一刀々心を込めて、不要な髪の毛束をハズしていきます。
不要な毛束を根本から間引くので、残った毛束がフォルムを形成していきます。
建築で言うと、くびれが出せないカット技法はツーバイフォーでパネル構成の建築技法。
私の彫刻カットは骨組みを重視する在来工法。

このように、後頭部に丸みが欲しいという絶壁の骨格補正が完成しました。
長年の間、後頭部シルエットにコンプレックスがあったお客様ですが、これでもう安心です。
横顔は奥行きが出てとても美しくなりました。
他のアングルも見てみましょう。




トップの高さも大事なポイントです。
両サイドのハチが出っ張っていてトップの高さがないので高さを出すためにトップはかなり短くカットしています。
最後に注意点ですが、今回のテーマが骨格の補正ということでしたので、こうしたくびれのあるシルエットを作ったわけですが、このヘアスタイルが良いという話ではありません。
カウンセリングの流れで骨格に対してコンプレックスがあったので、このようなヘアデザインを提案したということなのです。
ヘアスタイルそのものに価値があるのではなく、ある形にカットすることでお客様が幸せな気持ちになるから価値があるわけです。
誰でもこのスタイルを喜ぶわけではありませんので、あくまでもお客様のニーズに合わせたヘアデザインの意思決定を行うことがとても、とても重要であると考えています。
それではいつかサロンでお会いできる日を楽しみにしています。
